目次
自己破産するとNISAは解約される
自己破産では、生活に最低限必要な範囲を除き、原則として保有資産は処分対象です。よって、NISAの株式・投資信託も「換金可能な金融資産」にあたり、手続きの中で換価(通常は売却)され、債権者への配当に充てられます。
NISAが守られない理由
NISAは税金がかからないだけに過ぎず、財産を保護する制度ではありません。したがって、自己破産では一般の証券口座の資産と同様に取り扱われます。非課税メリットの有無は、財産として処分対象かどうかに影響することはないのです。
なお、従来の一般NISAやつみたてNISA(旧NISA)も、自己破産時の扱いは同様です。2024年からは新NISAに一本化されていますが、いずれのNISA口座であっても基本的な考え方は変わりません。
自己破産しても残せる財産とは
自己破産をしても、最低限の生活に必要な財産(自由財産)は残せます。現金については99万円以下、預貯金などについては20万円以下といった基準が設けられているのです。
しかし、NISAは通常この自由財産には含まれません。NISA残高が一定以上あると管財事件として処理され、手元に残すことは基本的にできないと考えておきましょう。
【参考】自己破産で免責決定がされないのは、どういう場合ですか。
自己破産しても iDeCo・確定拠出年金は解約されない
一方で、iDeCoや企業型確定拠出年金は、差し押さえ禁止と法律で定められています。60歳(原則)まで引き出せない年金原資として保護されるため、自己破産をしても原則解約・没収されることはありません。
自己破産後も守られる法的な理由
確定拠出年金法によると、iDeCo・企業型DCの給付を受ける権利の譲渡・担保・差押えを禁止しています。公的年金にも同様の差押禁止規定があり、老後の最低限の生活保障という性質が強く守られているのです。
確定拠出年金法第32条
給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
【参考】自己破産後の生活について
2つの重要な注意点
税金の滞納がある場合、条文には「国税滞納処分等による差押えは例外」とするただし書きがあります。つまり、税金の滞納があると自己破産とは関係なく差押えが生じ得ます。
また、差押えが禁止されているのは「給付を受ける権利」に限られます。すでに銀行口座に振り込まれた年金は、預金として自己破産の換価対象になり得る点に注意が必要です。
自己破産中に拠出を続けるかは家計優先で
自己破産手続き中は、家計の立て直しが最優先です。iDeCoは拠出の一時停止(0円)も可能なので、無理のない範囲に調整しましょう。
自己破産後に新NISA などの投資はできる
自己破産による免責確定後は、証券口座の開設・現物取引(新NISA含む)自体に法的な禁止はありません。クレジット/ローンは信用情報の事故登録で当面難しくなりますが、現金による投資まで制限されるわけではありません。
再開時に気をつけなければならない点
まずは、数か月分の生活費を現金で確保することがなによりも大切です。投資はあくまでも生活余剰金で行うよう心がけなければなりません。
その際は、通信・保険・サブスクなどの費用を圧縮し、投資は余剰資金のみに限定しましょう。再出発時は、つみたて投資枠の活用や国際分散の投信など、価格変動に耐えやすい仕組みのものからはじめるようにしましょう。
自己破産以外の債務整理方法
どうしてもNISAを解約したくないという方は、状況次第では自己破産以外を選ぶことで、投資資産を残しながら生活再建できる可能性があります。
任意整理
裁判所を通さずに将来利息のカットや返済額・返済期間の調整を交渉する方法です。一般的に3~5年をかけて完済を目指すことになります。
原則として資産処分は不要のため、NISAを解約せずに運用停止(売却せず保有)という選択も可能です。ただし、積立継続は返済計画と両立できるかを必ず確認しましょう。
【参考】群馬(高崎・前橋)で任意整理に強い弁護士をお探しなら山本総合法律事務所へ
個人再生
個人再生は、債務を大幅に圧縮し、原則3年で分割返済する制度です。住宅ローン特則を利用すれば、マイホームを保有しながらその他の返済負担を軽減できます。
なお、個人再生は資産を直ちに処分する手続きではありませんが、清算価値保障の原則により、保有資産(証券・NISA等)の評価額が高いほど最低弁済額が上がる点に注意しなければなりません。資産を残すか、返済額とのバランスを取るか慎重に検討しましょう。
【参考】群馬(高崎・前橋)で個人再生に強い弁護士をお探しなら山本総合法律事務所へ
まとめ
自己破産ではNISAの資産は原則換価されてしまいますが、iDeCo・企業型確定拠出年金は差押禁止の対象として、口座ごと処分されることは原則ありません。どうしてもNISAを解約したくないという方は、自己破産以外の選択肢も視野に入れましょう。
なお、状況に合った最適解は人それぞれです。迷いがある段階でも遠慮なく当事務所にご相談ください。個々の状況に最適な解決策をご提案させていただきます。
当事務所ではこれまで数多くの破産に関するご相談を受け、円滑に破産手続きを進行し破産者の再出発・リスタートを支援してきました。
また、法律的な支援に留まらず、破産者の立場に立った親身なサポートを行っております。
当事務所のたしかな経験とノウハウを持つ専門の弁護士がご相談をお受けしますので、まずはお気軽にお問合せください。