A:再生計画の変更の要件は以下の通りです。
民事再生法234条1項(・民再244)によれば、再生計画認可の決定があった後、①やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときに、再生債務者の申立てにより、②再生計画で定められた債務の最終期限から2年以内の範囲で、債務の期限を延長することができます。
1やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったとき
民事再生法234条1項が規定する「再生計画を遂行することが著しく困難となったとき」という文言は、法人等を対象とした民事再生手続の再生計画変更に関する187条1項にはない厳しい要件です。
このように、法人等を対象とした民事再生手続と比べて厳しい要件が加えられた理由は、個人再生手続においては、債務者は、生活を切り詰めて、弁済を行うことになるので、計画の遂行には多少の困難が伴うことはもともと予定されているからです。
この要件を満たすためには、例えば再生計画を作成した当初想定していた収入が落ち込んだ場合、具体的には再生計画を作成した時以降に給与の引き下げが行われた場合や、失業後の再就職先での収入が、失業前よりも下がった場合等が考えられます。また、収入はこれまでどおりでも、再生債務者本人や家族の病気等によって予想外に支出が増大した場合なども含まれると考えられます。
2債務者の最終期限から2年以内の範囲で、債務の期限を延長
個人再生手続においては、再生手続の終了後に再生計画の変更を認める一方で、弁済額の減額変更は認めず、弁済期間を2年を限度として延長することに限り認めることとしています。
個人再生手続の対象となる事件は、再生債権の総額が5000万円以下であり、個々の債権者の債権は、法人等を対象とした民事再生手続の場合と比較すれば少額といえます。その債権が、再生計画によって権利変更され、さらに少額になった上に、原則3年間(例外的に5年間)の弁済期間が認められているのですから(民再229条2項2号)、これを更に大幅に延長することは相当ではないと考えられます。そこで、原則的な弁済期間である3年を下回る、2年を限度として延長を認めることにしたものです。
3実務の利用状況
実務では、再生計画の変更申立てが行われることは少なく、その利用状況は活発とはいえないようです。上記1,2で説明したような制限があることから、再生計画の変更が妥当な案件が少ないためであると思われます。
より詳しいことにつきましては、個人再生の実務に精通した弁護士にご相談ください。