法人破産の際のポイント
1.受任通知をださない場合もある
個人破産の場合は、債権者の取り立てを止めるために、必ず受任通知書(「弁護士として破産業務を受けたので、これ以降一切の連絡は弁護士にしなさい。本人には連絡しないように。」という通知)を出します。
それに対し法人の場合、非常に緊急性が高く、また債権者に通知することで、資産を奪いに来るなど、弊害が予想される場合、受任通知を出さずに、いきなり破産申立をすることもあります。
2.債権者の把握
法人では、債権者が非常に多く、その把握は容易ではありません。つまり法人の場合、破産をすれば金融機関の債務だけではなく、買掛金・税金など一切が消滅しますので、依頼者が債務と思いにくいものまで、債権者として聴取しなければいけません。
3.賃借物件の処理
個人破産なら、破産しても生活がありますので、借りている部屋はそのまま使い続けられます。法人破産の場合、法人は消滅しますので、借りている物件はオーナーに返す必要があります。
預けている保証金が滞納している賃料や原状回復費用(リフォーム代)より小さければ、相殺され戻ってきませんが、上回っている場合にはオーナーから差額を返してもらうことになります。
ここで、時折あるのが、社長が会社名義で居住場所を借りている場合です。破産後も同じ場所に社長が住みたい場合、社長個人は生きていく存在ですから、居住自体は可能です。しかし、法人は消滅する存在ですから、法人としての借り上げ契約は消滅させなければいけません。
すなわち、法人として納めていた保証金や敷金は一度破産手続の流れで処理され、社長個人は新たに敷金を入れ、個人として賃貸借契約を結ぶ必要があります。
4.従業員の解雇
法人の場合、破産によって消滅しますので、従業員も解雇をすることとなります。
その場合、未払いの給与については、原則他の債権者に優先しますから、破産前提といえども、支払って構いません。
5.役員報酬
上記の従業員の給与と違い、社長や親族の役員が報酬を受け取ることは、多くの場合、不当と評価されます。
破産会社の場合、他の債権者の支払を止めるわけですから、そのような状況下で、経営者一族が報酬を受け取ることは、債権者を不必要に刺激するからです。